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医療過疎地域におけるクリニックの運営: 特に人材確保と育成について

2022.09.28

メディア掲載


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フルガキ・メディカルグループ 代表・理事長
古垣 斉拡 先生

私たちフルガキ・メディカルグループは、2022年6月に開業10年目を迎え、千葉県内と東京都内に4店舗のクリニックを運営している。

 

グループ内のクリニックには毎月5000人を超える予約患者さんが通院され、それを支えるのは常勤医師10人、スタッフ総勢80人の医療機関である。

 

さらに鹿児島県内で3店舗のイタリアンレストランを私の家族が運営しているが、コロナ禍で運営会社への経営経済的な支援も当グループで行い、レストランでは総勢30人のスタッフを抱えている。

 

よってグループ全体として総勢 110人のスタッフが医療と食のより良いサービスを提供するために日々奮闘している。
当グループが主にクリニックを運営している千葉県山武郡は九十九里浜沿岸域にあり、全国的にも医療従事者不足、特に医師不足で有名な土地でもあり、これまでも医師不足関連で様々なメディアの報道がなされてきた。

 

私は 2001 年に鹿児島大学を卒業し初期研修後、奄美大島で4年間離島医療を経験した。

 

2007年に千葉県立東金病院に赴任したが、東金病院は巨額の赤字が長年累積し、新たな設備投資できず施設が老朽化し2014年3月に惜しまれながら閉院となった。

 

同年4月に近隣に東千葉メディカルセンターが開設されたものの、開設当初2年間は糖尿病専門医が不在であったので、東金病院に約 2,500人かかっていた糖尿病患者さん(うちインスリン患者700人)を受け入れるための外来機能が不十分であった。

 

東金病院の閉院前には私の管理する外来患者数が約 1,200人(うちインスリン患者400人)となり、多くの患者さんから閉院後に関して不安の声が聞こえた。

 

その声にも押されて閉院1年前の2013年6月に東金病院の近隣にふるがき糖尿病内科医院を開院した。

 

開院時から多くの患者さんが東金病院から転院され、開院半年後にはレセプト枚数は月1000 枚を超えたので(うちインスリン患者350人)、閉院の受け皿となり、多くの患者さんの不安を少しは緩和したのではないかと考えている。

 

当グループの理念は3つあり、この理念のもとに行動するように全スタッフが努めている。

 

 

1. 私たちは医療を通して永く地域に貢献します

すべてのスタッフは医療技術知識の習得に努め、患者さんに還元し、患者さん及びスタッフの満足度向上に努めることで当グループを支持してくださるファン(顧客)を増やす。

その結果として利益を出し経営基盤を強固なものとし、医療機関として永続して地域に貢献できるように努める。

巨額赤字が累積して閉院に追い込まれた県立東金病院のスタッフ解雇や患者不安を二度と繰り返さないよう経営努力を徹底して行う。

 

2. 私たちは四方よしの精神を貫きます

当グループは関係する多くの方々の御支援によって運営されている。
そのために患者さん、従業員、関係業者様、当法人、関係するすべての皆様と良い関係を築くことを目指す。

 

3. すべてのスタッフは徳を積むように努力します

医療は患者さんに対するサービスを提供している。

 

利己だけでなく利他の精神をもてるようにスタッフは自省し、他者・地域のために自分は何ができるか考え自己研鑽に励む。また他者のために良い思い、良い行いができるように努める。

 

開業後に様々な困難があったが、何とか乗り越えることができたのは単に運が良かったからではなく、良い人との御縁に恵まれ、さらにその御縁を大切にするようスタッフ皆で努力し、結果として多くの方々に助けられたからである。

 

多くの関係する方々に対して感謝の念が堪えない。

 

それゆえに当グループの理念のうち、2番目の「四方よしの精神を貫く」は関係する全ての方々に幸せになってもらうことを心から望み謳っており、それを実践できるよう今後もスタッフ皆で努めていきたい。

 

当グループでは開院当初は 10人のスタッフで患者管理を 行ってきたが、患者さんの増加に伴い、近隣に分院展開してさらにスタッフを増やしてきた。

 

しかしスタッフ数が増えるにしたがい、スタッフ間に軋轢が生じることがあり、残念ながら退職者が増えた時期があった。

 

我が国の多くの企業がそうであるように、当グループの退職事例のほとんどは人間関係に起因するものであった。

 

状況の打開や改善を図るために様々な調査を行い、多くの医療機関が開業後に同じ道を経験していることを学んだ。

 

また多くの企業や医療機関と同じように理念を掲げて、スタッフを教育し育成する必要性と重要性を痛感した。

 

それゆえ当グループでも理念を作成し、理念のもとに行動目標を作り、スタッフが気持ちよく働けるための社員のためのルールを作成した。

 

さらに、パート勤務の方を含めたスタッフ満足度の向上(EQ)が患者満足度向上(CQ)にもつながることを学び、スタッフ満足度向上のために様々な事項を計画し、実行してきた(EQ なくしてCQなし)。

 

計画実行してきた事項は主に以下の通りである。

 

 

人材確保、育成のために実施している項目

① 決算賞与の実施
② 診療時間の短縮
③ 退職金制度の導入
④ 休暇取得の取り組み
⑤ 年2回のスタッフ面談とアンケート実施
⑥ スタッフの誕生日のお祝い
⑦ 産休、育休制度活用の奨励
⑧ 子供手当、世帯主手当の支給開始
⑨ 医療技術や知識を向上させる研修や研究会の実施

 

 

① 決算賞与の開始

年2回の定期賞与とは別に、2020年度からパートを含めた全職員に年2回、実施している。
理念にある四方よしの精神を貫くことを実践するために、利益をスタッフにも還元する。
パート勤務の方まで賞与を出す会社はコロナ禍にあって千葉県内では珍しいのでスタッフには大変喜ばれている。

 

② 診療時間の短縮

診療時間を30分早めて16時30分に受付終了、17時までに診察終了、17時30分頃にはすべてのスタッフの退勤を目標にし、実践している。
多くの医療機関では特にレセプト期間は遅くまで残業することがあるが、スタッフ数を確保して残業時間削減にも取り組んでいる。
それにより仕事と家庭の両立を目指し、永く勤務できるように努めている。

 

③ 退職金制度の導入

中小企業退職金共済制度を利用して、スタッフは積み立てを行っている。

 

④ 休暇取得の取り組み

クリニック毎に適切なスタッフ数の確保に努めて、スタッフが安心して有給休暇等が取りやすい環境作りを行う。
継承した2店舗のクリニックではこれまでにスタッフ数を約1.5倍に増やしている。

 

⑤ 年2回のスタッフ面談とアンケート実施

スタッフからのアンケートや面談を通して、スタッフの意見や不満等を把握して、職場環境等の改善に繋げている。

 

⑥ 誕生日のお祝い

スタッフの誕生日には朝礼時に他のスタッフ全員でお祝いし、法人からは金一封と同僚からは寄せ書きを渡している。

 

誕生日に対してスタッフ全員からの寄せ書き

 

⑦ 産休、育休制度活用の奨励

開院以来、7名のスタッフが産休と育休を経験し、そのすべてのスタッフが職場復帰している。
これらの実施により、開院当初には医師1人とスタッフ10人であったが、開院10年目の2022年7月には、常勤医師10人、スタッフ総勢80人の医療機関に成長することができた。

 

また最近2年間は退職者がかなり減少し、定着率が向上している。
今後も理念を掲げてそれを実行し、永く地域に貢献できる医療機関をみんなでつくっていきたい。

 

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